思いがけずうれしい人がやってきた
10年前、気まずい関係になり一生会えないだろうと思っていた方が、新年に突然お越しいただいた。取引上の問題があって、個人的にはお互い何の恨みもなかったが、二度と会えないと思っていた。最後に、もう一度お会いした方がよいと思っていたので、先方の応接室を出て別れる際に深々とおじぎした。指が床につくまで頭を下げてわかれたことを覚えている。
今日思いがけず見えたその方は、あの時の別れ際の丁寧なおじぎが心に残っていたので訪ねたと言っていた。この挨拶の仕方は伊藤忠商事の創業者、伊藤忠兵衛氏から教わった。「商売で頭をぺこぺこするのはみっともない。おじぎをしないと恰好がつかなければ、膝を折って頭の位置を下げれば良い。堂々と仕事せよ。ただし、頭を下げなければいけないときが3つある。ひとつは初契約できたとき。頭を下げるのであれば床に手が届くまで下げた方が良い(理由は?)。ふたつ目は自分が間違ってご迷惑をかけたとき。3つ目は別れ際。何があっても深々と頭を下げれば次につながる」と、忠兵衛さんから熱海の別荘で直接教えていただいた。過去に、私は挨拶を間違わなかったので会社がつぶれないで済んだという恐ろしい経験をしたこともある。近江商人の伊藤忠兵衛さんに今でも感謝している。
