テーマのある街
これからの街づくりにデベロッパーの果たす役割はひときわ大きい。デベロッパーはどんな街づくりをしたいか、どんな暮らしのできる街か、のコンセプトをしっかりと打ち出し、10年、20年、30年後にこの街がどのような姿になるかのイメージをしっかり持って、分譲時に説明するべきなのです。土地や建物を分譲してハイ終わりというのでは困る。せめて街の植栽が全部育ったときに、どのような景観、街並みになるかのプランを提示してほしい。ユーザーもそうした将来の街の姿を気に入って購入するということが大事なのだと思います。
家庭菜園を楽しめる街、病院・老人ホームなどを誘致しての健康の街などはその一例です。なかでも住まい選びの重要なポイントは、分譲地内にある自然にあります。働き盛りの40代の男性に、「老後にどんなことをしたいですか」と聞くと、「草木を楽しむ庭づくりをしたい」「土いじりをしたい」と答える人がいちばん多い。書店にはガーデニングの雑誌が並び、カルチャーセンターでもガーデニングは人気の高い講座のひとつといいます。
さらに最近では田舎暮らしを勧める雑誌や定年帰農という言葉さえ流行っています。人々の自然への希求の強さは現代人の疲れを示すシグナルなのかもしれません。農耕民族である日本人には時代がいくら変わろうと原体験として自然と共生し、自然に感謝し、愛する美意識が生活の中に息づいており、日本の文化をささえてきているように思えてならないのです。
自然のなかを歩いているうちに、いつしか幼い日々を思い出させるような、そんな懐かしい街があってもいいのではないかと思います。懐かしい街づくりの提案、そんなアプローチがあれば、住み替えてもいいという人も多いのではないでしょうか。とくに人工的で無機的な分譲地に辟易している年輩の方ならば、興味をもたれるはずです。こうした魅力ある街づくり、すなわち「住み替えたくなる街づくり」がどんどん行われるようになったらと思います。