畳
畳はもともと座具であったといいます。幅はイグサの長さで決まり、長さは1人用のほぼ正方形のものから、2人から3人が座れるもの、あるいはもっと長いものまでがありました。
平安時代に、神殿造りに暮らす貴族のために、1人に対し、畳1枚が使われるようになりました。その大きさは、長さがほぼ1間、幅が半間と決まり、必要に応じて部屋のあちこちに置かれました。昼は座布団として夜は布団としての機能を持ち合わせていたと考えていいでしょう。持ち運ぶために、それほど重くなく、柔らかいものでした。鎌倉時代になると、部屋の周囲に沿って敷く追い回し敷きが登場し、室町時代になってはじめて、現在のように室内一面に敷き詰められるようになりました。薄く柔らかいと、ずれたりたゆんだりという不都合から、この頃には、現在のように固く重いものになりました。
とはいえ、畳が普及していたのはある階層以上の住まいで、江戸時代でも長屋などの借家では板の床にむしろを敷くのがふつうでした。農村では昭和になっても、特別なとき以外は畳を使わず、積んでしまっておいたといいます。こうみてくると、畳の歴史は古いのですが、庶民の住まいに浸透したのは、案外最近のことと言えます。
畳は最高の床材です。畳のほど良い固さは高齢者や幼児の足腰に負担のかからない固さなのです。畳も木のように湿気を吸い吐き出すので、空調の役目を果たします。靴下を脱いで素足で歩くときの心地よさも捨てがたいものです。畳に限らず、日本の住まいは靴を脱いで上がるので、清潔です。座ることも寝転がることもできます。赤ちゃんがハイハイしても大丈夫。靴を脱ぐことの楽しさは言うまでもなく、一日の疲れがとれます。
欧米でも、一時の日本ブームが発端になり、椅子の生活を座る生活に切り替えるのが流行しましたが、今は単なる流行ではなく定着してきています。一度味わったら、やめられない気持ちは大いに分かります。ところで私は、畳の敷かれていないリビングルームや洋間の広さを、今でも「8畳の洋間」とか「15畳のリビング」と表現することは、日本人の畳への愛着からだと思っています。
親日家フランス人たちの間で使われている言葉に“tatamiser(タタミゼ)”という造語があるそうです。意味は「日本語に習熟」することなのだといいます。畳が日本の象徴であることは、海外で証明されるのかもしれません。