湯の文化
千葉大学名誉教授の清水馨八郎(しみず・けいはちろう)さんは、お風呂に関しては一家言あります。清水さんは、日本人がこんなに優秀なのも、日本経済がこれほどまで発展したのもお風呂の文化があったからだといいます。そして日本人が健康で長生きできるのも湯のおかげだと。私も同感です。
西洋のお風呂はシャワーが中心です。湯船があっても浅くて肩まで浸かれません。外国に行ったときにお風呂に入ると、湯船が浅くて物足りない思いをします。その点、日本の湯船は深く、肩までお湯につかると体があたたまって気持ちがゆったりしますし、疲れもとれます。また、お風呂は一人になれる空間。毎日、湯船に浸かると不思議と反省をしています。つい、いつも長湯になり、お風呂を出たあとも体がほてったままで、すぐには寝付けないので、しばらく新聞や本を読んだりする。これを毎日繰り返していると、結構な勉強量となっているのです。
「湯」という言葉はアメリカやヨーロッパ、中国にもありません。日本語独特の表現です。“Hot Water”というのは“あたたかい水”を指します。湯の文化は日本に根深く残る独自の文化なのです。
お風呂談義については、ノーベル学者の利根川進さんとも既に花を咲かせたことがあります。米国での研究活動が長い利根川さんですが、大の相撲ファンで米国にいても番付表や力士の星取表を取り寄せるほどでした。その利根川さんが「日本のお風呂が欲しいんですが」と言い出されたのです。身体を深く沈め、ゆったりと浸かることのできる和式風呂ということです。利根川さんのご友人で、数学者の広中平祐さんもお風呂大好き人間で、お風呂に入っているとき、思わぬヒラメキや考えが浮かぶことがあると言われていました。日本を代表する頭脳が日本式風呂を礼賛する。これはやはり湯の霊験あらたかということでしょう。
私はもともとあまりお風呂が好きでなく、清水さんに言われてから、毎日入るようになったのですが、もう少し前から入っていれば、と今悔やんでいます。