風呂敷
生活の小道具の一つである風呂敷は、日本の文化に見られる柔軟性と繊細さが表れています。外国を訪問するとき、喜ばれるお土産の筆頭が風呂敷です。テーブルクロスに使えるし、スカーフにもできます。人によっては衣装としても、インテリアのアクセントとしても活用してくれます。そうしたさまざまな利用法を見るにつけ、風呂敷ほど、こちらのニーズに応じて自由自在に使いこなせるものは、世界広しといえどもほかに例がないのではないかと思えてきます。
もともと風呂敷は、風呂屋で湯上りの場所に敷いたり、脱いだ着物を包んだり、というように使われたのが、いつの間にか物を包むのに使われるようになったのだということはよく知られています。なにしろ何かを包むのにこれほど便利なものはありません。四角のものは四角に、丸いものは丸く、また大きいものは大きいままに、小さいものはそれに応じて小さく、手提げ風にも背負うかたちにも、抱えるふうにも、とにかく自由自在に使いこなすことができるのです。
欧米では、物を運ぶといえばボストンバッグ、書類は書類カバン、小物はハンドバッグとなります。いくつものカバンを常備しておかなければなりません。その点、風呂敷ならば、大小どんなものでも包むことができます。荷物のないときには小さくたたんでポケットにでも入れておくことができるのです。
カバンと風呂敷をこうして比べれば、風呂敷の優秀性、日本人の発想の豊かさが納得されるでしょう。最小の素材にまで切りつめられた単純さが多くの使用法を生み、包まれる中身のものによって変幻自在にかたちを変える――。この自由で柔軟な発想は、日本の内か外か分からない開放的な空間、融通性に富んだ多目的に使える畳の和室、そしてシンプルながら合理的な引き戸や障子、ふすまなどの日本建築に相通じています。風呂敷一枚に、私は日本の時代を予感しています。決して大風呂敷を広げるつもりではありません。