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蔵とともに文化をとり戻す

お年寄りが病気で入院するとき、本人の持ち物が入っている物入れやタンスを持たせると回復も早いといいます。お年寄りの持ち物には思い出が詰まっています。それらを身近に置くことで刺激にもなり、気が滅入ることもなく過ごせるのです。思い出はお年寄りを力づけてくれる何よりのものの様です。

名家といわれる家には今でも蔵があり、そこには先祖伝来の由緒正しき掛け軸や刀などの古美術品や古道具が山をなしているということも稀ではありません。日本の文化財の保存という役目を、こうした代々続く名家の蔵が、ある意味では国に代わって担ってきたとも言えるでしょう。国宝級の美術品がいまだに発見されずにどこかの蔵にひっそりと眠っていないとも限らない。“死蔵”にだけはならないようにしたいものです。ただ、庶民にはお宝もないが、蔵もない。それどころか、住まいに収納スペースさえ満足にないのです。主婦へのアンケート調査でも、収納に関する不満が常に上位を占めています。この収納スペースの不足は改善されるどころか、住宅と車庫の一体化の増加、バス・トイレなどサービスルームの面積拡大など、収納スペースが一段と圧迫化される傾向にあります。しかし、モノだけはどんどん増えていき、それでなくても狭い居住空間をますます狭くしています。

解消策として、いかに上手に“捨てる”かに関心が集まるのも不思議はありません。しかし、時代は変わり、モノは大切に使う、捨てずにリサイクルする時代です。そうした時代のニーズに応えて開発したのが1階と2階の間に大収納空間を持つ住宅です。1階と2階の間に大収納空間をつけた住宅。そのボリューム感は、まさしく日本古来の蔵のイメージに近いものでした。これもその背景には日本の住文化という時代の呼び声があったからです。

蔵は捨てる文化へのアンチテーゼであり、モノを大切にするという日本人の心を取り戻すきっかけになると思います。高価なものでなくても、捨てるに捨てられない想い出のモノは身近において残しておきたいものです。親が大切にしたものは、子どもへの無言の教育になります。その家の家風をも形づくるでしょう。今、日本人が忘れられている大切なものを思い起こさせることになるはずです。

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