柱のキズ
「柱のキズはおととしの5月5日の背比べ-」という童謡があったかと思います。親は子供の身長を測るときに柱に傷をつけ、成長を実感するものです。傷と共に名前や歳、または幼稚園年少・年中、小学5などと書き込まれた柱が我が家にもあります。それは座敷の書院の大事な柱です。普段は障子で見えないようにしていますが、ひとつひとつの傷に思い出が詰まっており、見るたびにこんなに小さい頃があったのかと感慨に浸っております。子供はたまにやって来て、「この座敷はなんとなく落ち着く」と言っては昼寝をして帰ります。子供の成長が家族にとって思い出になっていることはどなたでも同じではないでしょうか。元来、家は子供のために造るのですから。
同じような話がもう一つあります。土壁を塗った場合、通常乾くまでに丸1日かかりますが、その乾く前の軟らかい壁を、よちよち歩きの子供が触ってしまいました。子供はおもしろがってペタペタ触ったので、壁には4つも5つも紅葉のような小さな手形が付きました。ご両親は壁をそのままにして固めました。やがてその子供が成長し家を出て行く時、壁に付いた自分の小さい手形を見て、小さい頃を思い出し、ここまで育ててくれた両親に感謝をするのでしょう。また自分の子供に「これがお母さんが小さい頃の手形よ」と説明をすると、子供は不思議がり、お母さんは育った場所を懐かしく思うことでしょう。やがておばあちゃんになって孫を連れてきて、「これがおばあちゃんの小さいころの手形よ」と説明すれば、驚いて話を聞きたがり、またおばあちゃんは育った場所を懐かしく思い出すことでしょう。こんな他愛もない日常が繰り返されるのが住まいのあり方だと最近感じております。200年住宅のヒントがこんなところにあります。