世界同時不況を乗り越えて
                 環境経営で勝つ
住宅寿命の見直しでCO2を削減 国産材利用、物流の最適化で実現した200年住宅(日経BP社私の講演より)
欧米に比べ、圧倒的に短い日本の住宅寿命が見直されようとしている。
福田前首相も「200年耐用住宅」をアピールし、国会では優良住宅促進法が審議されているなど、見直しの動きは加速している。住宅はいったいどれだけの環境貢献ができるのか。200年住宅の実現を目指して事業化した再生できる家:HABITAの地球環境に対するポテンシャルについて
日本の住宅の平均寿命は大変短く、30年程度とされています。米国が44年、英国が75年という数字と比較して非常に短いことが分かります。
住宅を30年で使い捨てにしてしまうと、多くの資源が無駄になります。それではいけない、環境にも良くないということで、長持ちする住宅について、世界の古民家などを対象に研究を進め、ミサワ・インターナショナルでは昨年より「200年住宅」の事業化を開始しました。
世界の200年住宅の共通点
昨今、地球温暖化が急速に問題化してきています。以前、私が創業したミサワホームでは、40年前に南極基地の建物を建設しましたが、当時は氷の上に建てたものが、現在は土の上になってしまいました。国内でも、第二次世界大戦が終わった頃には沖縄にしか生息していなかったシロアリが、大阪万博の年には大阪で確認され、現在は北海道以外の全国に生息地域が広がっています。住宅の土台を食い荒らすシロアリは、日本においては温暖化の一番身近な実害となるかもしれません。
東京大学の山本良一教授は、「人類の誕生が0時で滅亡が24時とすると、現在は21時である」と表現しています。そして、滅亡を防ぐためには「あらゆる環境効率を10倍にしなければならない」と言っています。「FACTOR10」と呼ばれるものです。3年前は「FACTOR7」でした。この3年でそれだけ事態が進行しているということだと思います。日本の住宅の平均寿命は現在30年ですから、10倍というと本当は300年耐用が求められますが、200年であれば「FACTOR7」は実現できますから、まずそこから取り組んでいこうと思っています。
私が訪れた世界160の地域には、200年以上建っている住宅は数多く存在します。日本国内でも344軒調査しましたが、これは水周りの改築などを施していない数で、施したものを含めると1万軒ほどの200年を超える家屋が今も使われています。
こうした200年以上経過している建物に共通している点は、多くが木造ということです。木材は地産地消で地元の木を使用し、大断面で乾燥した木材を露出させています。空気に触れさせることで、木に呼吸をさせ、長持ちさせています。そして、屋根の勾配がき
つく、雨がすぐに流れ落ちる設計となっています。
鉄筋コンクリートの住宅は200年以上、鉄骨構造は100年以上の歴史がないのです。日本で200年住宅を実現するには、木造が一番いいのです。地元の木材を使用すること
も大切です。新潟では杉で家を建てますが、この杉材を長野に持っていくと腐ってしまいます。逆に長野の家で使用される唐松を新潟に持って行くと曲がってしまいます。木材は100km移動すると駄目になってしまうのです。
国産材住宅でCO2削減に貢献
木造住宅は、世界の木材生産量から考えると、200年以上持たせないと木材の生長が追い付かなくなってしまいます。CO2」の吸収量は樹齢20年の木を100とすると、樹齢80年の木は20程度しかありません。成長過程では多くのCO2を吸収する木も、大きくなってしまうとあまり吸収しなくなってしまうのです。
国内で植林された樹木の多くは、第二次世界大戦後に植えられたものですから樹齢は60年ほどで、CO2の吸収量は、だいぶ落ちています。そろそろ伐採を行い、新たな木を植林する必要があるのです。
国内の森林は、年間1億㎥生長を続けていますが、実際に活用されているのはその20%程度です。外国産の木材は、地元の木ではないため弱く、特にシロアリに弱い。しかし、価格は国産材に比べて安価です。国産材が高いのは、山元で切り出された木材が市場に出された後、製材所、乾燥所、集成材工場、防腐処理工場、プレカット工場を経て現場に運ばれるため、それぞれの移動に費用がかかってしまうためです。
しかし、山元から直接工場に運び、プレカットまでを済ませるコンビナートのような施設ができれば、簡単に計算して1㎥当たり8000円程度の費用を節約できます。その分を山元に還元できれば、山の仕事にも人が戻り、日本の森林をもっと有効活用できるでしょう。ただ、このような施設は日本全国で九州に1カ所、それに近いものが関東に1カ所あるだけです。
住宅を建てる際の費用の3分の1は物流費が占めています。海外から木材を調達し、国内で流通させ、建築現場にも多くの施工業者が車で乗り付ける。その移動距離を合算すると、16万kmにもなります。地球一周が約4万kmですが、その4倍もの距離を移動しなければ家が建たないのです。その移動には、もちろんCO2の排出が伴います。
国産材を使用するミサワ・インターナショナルの「HABITA」では、この移動距離を1.6万km程度まで削減を目指しています。さらに、200年住宅を実現するために、国産材を利用し、
木材を表面に露出させた「現し(あらわし)工法」を採用しています。そして、物流の合理化を徹底することで、リーズナブルな価格になります。将来的には、風力や太陽光などの自然を利用したエネルギーの自給自足や、生命工学により、健康な人生と、食の問題も視野に入れています。また、100年住宅ローンを実現し、毎月の支払い額を少なくすることや、長く同じ
場所に住むことによるコミュニティーの形成まで含めた街づくりの在り方も検討しています。
竪穴式住居に始まる日本の住宅は、病気を避けるために高床式になり、大陸文化の流入によって寝殿造りとなりました。そして、戦火が続く時期には火災に強い武家屋敷となり、平和な時代が続けば数寄屋造りが発達しました。こうした変化は、ほぼ400年ごとに起こっており、数寄屋造りが生まれてから既に400年が経過しています。環境をキーワードにした新しい200年住宅に切り替わる時期に来ているのだと思います。
(日経BP社設立40周年記念プロジェクト2008東京国際環境会議の私の講演より)

優れたデザインも200年住宅の条件(桂離宮は400年)